近年、日本を訪れる外国人は観光・就労・留学など多様な目的で増加しています。2025年の訪日外国人数は約4,200万人に達し(出典:日本政府観光局)、コロナ禍を経て過去最多となりました。また、在留外国人も増加を続け、出入国在留管理庁の統計では390万人を超えています。
こうした社会構造の変化に伴い、地域医療の現場において外国人患者を受け入れる体制整備は「特別な取り組み」ではなく、「持続可能な医療経営の一部」として捉えるべき時代に入っています。
第一に、医療の公平性という観点があります。医療は国籍を問わず提供されるべき社会基盤であり、言語や文化の違いによって医療アクセスに格差が生じることは望ましくありません。
第二に、医療機関経営の安定化という側面です。外国人居住者や訪日客の増加は、新たな患者層の拡大を意味します。適切な受け入れ体制を整えた医療機関は、地域における信頼を高め、選ばれる医療機関となります。
第三に、医療安全の確保です。言語の壁により既往歴やアレルギー情報が正確に把握できない場合、医療事故のリスクが高まります。対応体制の整備は、リスクマネジメントそのものといえます。
院長としてまず着目すべきは「受付の初動対応」です。外国人患者にとって、受付は医療機関の第一印象を決定づける場所です。
(1)多言語での基本表示整備
院内案内、問診票、診療時間、支払い方法などを英語を中心に多言語化することは最低限の準備です。紙媒体だけでなく、院内掲示やホームページの多言語対応も重要です。
(2)問診票の工夫
症状選択式やイラスト付き問診票を導入することで、言語力に依存しない情報収集が可能になります。既往歴、服薬歴、アレルギー歴などは特に明確化が必要です。
(3)通訳・翻訳手段の確保
常勤通訳の配置が難しい場合でも、電話通訳やタブレット端末による遠隔医療通訳サービスを導入することで対応は可能です。受付スタッフが「英語を話せるか」よりも、「通訳手段を迅速に手配できる体制」が重要です。
(4)医療費説明の明確化
日本の保険制度は外国人にとって分かりにくいものです。自費診療、保険適用、支払い方法、未収金対応の方針を明確にし、説明資料を整備することがトラブル防止につながります。
医療現場では「外国人患者対応」が新たな課題として注目されています。
「受付意思疎通が難しい」「説明が十分に伝わらない」「現場スタッフの心理的負担が大きい」…等
このような実情を受け、世界的に発行されているTime Out誌にて「外国人対応可能な医療機関」が特集されました。
シンリョウでは、その日本語版をご用意いたしましたので、ぜひご覧ください。
(↓↓↓↓↓↓下記をクリックしてください↓↓↓↓↓↓)

プレスリリース:『Time Out Japan Magazine』を通じて訪日外国人向け医療機関情報の発信を開始
診療部門においては、言語対応に加え、文化的背景への理解が求められます。
(1)インフォームド・コンセントの強化
説明内容を簡潔にまとめた多言語資料を準備し、重要事項は通訳を介して確認することが不可欠です。「説明した」ではなく「理解された」ことを確認する姿勢が求められます。
(2)宗教・文化への配慮
食事制限、身体接触への考え方、家族同席の希望など、文化的背景は診療に影響します。特に入院を伴う医療機関では配慮体制が重要です。
(3)院内研修の実施
年1回程度でも外国人対応研修を実施し、想定事例を共有することが組織的対応力を高めます。受付・看護師・医師が共通認識を持つことが重要です。
(4)緊急時マニュアル整備
救急対応時の通訳確保方法、パスポート確認、保険確認手順などをマニュアル化しておくことで、現場の混乱を防ぎます。
外国人患者対応は単なる言語対策ではなく、「経営戦略」と「医療安全対策」の両輪で考えるべきテーマです。小規模クリニックであっても、最低限の多言語問診票と通訳手段の確保は実現可能です。重要なのは完璧を目指すことではなく、「対応できる体制を整えています」というメッセージを明確に打ち出すことです。
今後、日本社会はさらなる国際化が進みます。地域の医療機関が外国人患者を適切に受け入れることは、地域全体の安心感につながります。院長のリーダーシップのもと、受付から診療まで一貫した受け入れ体制を整備することが、これからの医療機関経営における重要課題といえるでしょう。
外国人患者対応は「負担」ではなく、「信頼を築く投資」です。今こそ、未来を見据えた体制整備を進める時です。
⇒コラムトップページはこちら
⇒コーポレートサイトはこちら