日本の医療機関では、近年、賃金引き上げの動きが加速しています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響や医療従事者不足による労働環境の厳しさがクローズアップされる中、医療機関における賃金改善は急務となっています。さらに、診療報酬改定では、医療従事者全体の賃金を段階的に引き上げる計画が進行しており*1、医療機関としてはこの流れに対応せざるを得ない状況です。
しかし、賃金の引き上げは人件費の増加を招き、経営を圧迫する可能性があります。そのため、医療機関にとっては、生産性を向上させるためのツールや補助金を有効活用することが求められています。
*1 令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】(厚生労働省保険局医療課)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251534.pdf
賃金の引き上げとそれに伴う人件費の増加に対する一つの解決策として、生産性向上ツールの導入が挙げられます。これにより、業務の効率化や自動化が進み、スタッフの負担軽減と時間短縮が期待できます。ここでは、特に医療機関に適した4つの生産性向上ツールを紹介します。
生産性向上ツールの導入には初期投資が必要ですが、補助金制度を活用することで、その負担を軽減することが可能です。例えば、厚生労働省の「業務改善助成金」*2は、事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上に寄与する設備投資を行った場合、その費用の一部を助成する制度です。
*2 第2期以降の詳細は、厚生労働省の公表資料をご確認ください。
*3 業務改善助成金について(厚生労働省)
「業務改善助成金」は、事業場内の最低賃金を30円以上引き上げると同時に、生産性向上に資する設備投資(機械設備導入、コンサルティング、人材育成・教育訓練など)を行った場合に、その設備投資にかかる費用の一部を助成する制度です。例えば、順番管理システムや診療予約システムの導入は、患者のフローを効率化し、スタッフの業務負担を大幅に軽減し、生産性向上に大きく寄与します。なお、引き上げる賃金額に応じて助成の上限額が異なり、引き上げ額が大きいほど助成金の上限も高くなります(最大600万円)。また、特例事業者(最低賃金が1,000円未満の事業場、または物価高騰等で利益率が3%以上低下した事業者)には、より高い上限額が適用されるなど、柔軟な支援が設けられています。
業務改善助成金を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
医療機関における賃金引き上げと人件費の増加は避けられない課題ですが、生産性向上ツールや補助金を活用することで、その負担を軽減しつつ、業務効率を向上させることが可能です。これらの取り組みは、患者へのサービス向上にもつながり、医療機関の持続的な成長をサポートする重要な要素となります。
⇒コラムトップページはこちら
⇒コーポレートサイトはこちら