スイスは国土面積が約4.1万㎢、人口890万人のヨーロッパ中央に位置する連邦共和国です。世界的な製薬企業であるロシュとノバルティスの2社が本拠地にするなど、スイスへの高度人材流入は増加傾向にあり、人口の4分の1を外国人が占めます。今回は、世界をリードする医療技術産業拠点のスイスにおける医療水準や、医療制度を解説します。◇スイス国民の健康状態 2023年のスイス国民平均寿命は男性82.2歳、女性準を誇ります。一方、2023年の出生数は約8万人、合計特殊出生率1.33と年々減少傾向にあり、2022年での乳児死亡率は3.8%です。BMI30以上の人口比率は男性16・62%、女性10・94%とOECD諸国では低水準ですが、近年は男性の肥満比率が上昇しています。少子高齢化が進んでいる状況や肥満比率は低いものの、男性の肥満比率が上昇しているのが日本との共通点です。◇スイスの医療水準 スイスの医療水準は高く、高い密度で診療所や病院が整備されています。医療へのアクセスと質を評価する指標、HAQインデックスでは7位に入るほどです。病気やケガの治療はホームドクターが対応し、必要に応じて専門医などの医療機関に委託します。救急病院は事態が深刻で生命が脅かされているときに利用するものであり、たいていのホームドクターは緊急時には往診し、夜間でも週末でも緊急連絡が取れるように待機しています。 ◇全国民に義務付けられる基礎医療保険制度 スイス国民には基礎医療保険制度の加入が義務づけられています。日本の国民健康保険に相当する制度ですが、一般の保険会社が運営し、補償すべき内容が法律で定められているのが特徴です。基礎医療保険がカバーする範囲は被保険者の病気や事故の療養だけでなく、出産・妊娠検査・人工妊娠中絶・予防接種など多岐にわたりますが、歯科治療は含まれません。保険会社の選択や変更は自由で、保険料は年齢や選択したプランで異なります。基礎医療保険に上乗せする追加保険に加入すると、保険の対象範囲を広げられます。◇増加傾向にあるスイスの保健衛生費 2022年スイスの保健衛生費の支出は869憶フラン、国内総生産の11.7%を占め、国民一人当たりの保健衛生費はOECD加盟国中第7位です。保健衛生費の増加は、国民の高齢化や医療の発達、医療に対する需要の高まりが原因とされています。保健衛生費を抑える対策として、基礎医療保険制度により初診で選択できる診療所が制限されるマネージドケアの促進や医療のIT化戦略を講じているのが現状です。保険衛生費の増加に伴って、毎年更新される基礎医療保険料の引き上げは、社会問題化しています。◇基礎医療保険制度が支えるスイスの医療事情 スイスの基礎医療保険制度は保険会社やプランを選択する主体性が求められる制度です。少子高齢化に伴う保険衛生費の増加に国が対策を迫られているのは、日本と共通しているといえるでしょう。スイスの医療事情1085.8歳といずれも過去最高記録を更新し、世界最高水スイスの病院紹介
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