7●iDeCoのデメリット 受取時期や手数料には注意してのため」という目的でスタートする人も多く見られます。自営業で所得の多い開業医の場合、所得税や住民税の負担は非常に重くなるでしょう。iDeCoを活用すれば、現役世代での税金負担を軽減しつつ、将来に向けた備えができます。iDeCoで積み立てた月々の掛け金は、その全額が所得控除の対象になります。拠出した掛け金は丸ごと所得から差し引けるため、所得税と住民税の課税額を減らせるでしょう。第1号被保険者である自営業者が上限いっぱいで掛け金を拠出した場合、年間81万6千円もの所得控除を受けられるのです。民間の個人年金保険を利用した場合と比較して、控除額はより大きくなるでしょう。 また一般的な投資活動で運用益を得られた場合、その収益には20・315%の税金がかかります。一方で、iDeCoで運用し収益が得られた場合は非課税に。税金として引かれる金額がない分、より効率良く運用できます。60歳以降に資金を受け取る際には、受取方法によって「公的年金等控除」や「退職所得控除」を利用可能です。どちらの制度でも一定額までの受取金が非課税になるため、税金の負担を減らせるでしょう。 一方で、iDeCoにもデメリットはあります。老後資金を作るためのiDeCoは、長期運用を前提としたもの。60歳以降にならなければ、積み立てた掛け金を現金化することはできません。また60歳時点で運用期間が10年未満の場合、過去の積み立て年数に応じて受取開始時期が決定されます。「投資の結果がいい時期に現金化したい」「事業の都合ですぐに現金が必要になった」といった希望には対応できません。 またiDeCoの利用には各種手数料がかかります。加入時には一律で一度だけ2,829円の国民年金基金連合会納付金が発生。運用期間中には毎月運営管理機関手数料が発生し、その金額は金融機関ごとに異なります。運用商品に投資信託を選択した場合、商品に応じた信託報酬を負担しなければいけません。特に運用期間中に継続的に発生する手数料については、運用成績にも影響を与えるものですから、慎重に検討する必要があるでしょう。 iDeCoの運用商品には一部「元本確保型」があるものの、基本的には「元本変動型」で、投資を前提とした制度です。「元本確保型」のみで運用する場合を除き、将来的に受け取れる金額が確定しない点もデメリットの一つだと言えます。将来的に「支払った掛け金総額よりも受取金額が少なくなる」といったリスクも存在しています。とはいえ、金銭面でのiDeCoのデメリットは節税効果で相殺できる可能性も高いでしょう。特に、税負担が大きい富裕層においては、「所得控除額を最大で81万6千円増やせる」という事実は非常に大きな意味を持ちます。制度の恩恵を実感できる場面も多いでしょう。まずは冷静にメリットとデメリットの両方を把握した上で、検討してみてください。 iDeCoを始めるときの手順は次のとおりです。● 自営業である● 所得が多く、月々の掛け金拠出に無理がない● 住民税や所得税を支払っていて、少しでも安く● 勤務先に企業型確定拠出年金がない● 一般の投資信託で老後のために投資を行っている● 毎月の生活資金に余裕がある❶自分自身の掛け金上限額を知る❷iDeCoの口座を開設する金融機関を選ぶ❸金融機関から申し込み書類を取り寄せ、必要 書類をそろえる❹運用額と運用商品を決定し、申し込みをする❺運用をスタートする 口座開設する金融機関は、運用商品や手数料、利用者向けのサービスなどで決定します。金融機関ごとに違いがあるため、希望に沿ったところを見つけてみてください。申し込み時に必要な書類としては、本人確認書類のコピーや年金手帳、引き落としのための口座情報などが挙げられます。会社員や公務員の場合、事業主証明書も必要です。発行までに時間がかかるケースもあるため、できるだけ早めに手配しましょう。 将来のためにも節税のためにも使えるiDeCo。次の条件に当てはまる場合は、特にメリットが大きくなります。ぜひ積極的に利用を検討してみてください。 したい 会社員や公務員と比較して、老後の備えが不十分になりがちな自営業。医師においても、それは例外ではありません。「現役世代と同様に余裕のある生活を」と望むのであれば、ぜひiDeCoを積極的に活用してみてください。節税効果で恩恵を受けつつ、将来に向けた確かな備えも実現できるでしょう。 また会社勤めをしている人でも、状況によってはiDeCoを利用するメリットは十分にあります。特に一般の投資信託で資産運用をしている人は、それをiDeCoに変えるだけで、節税効果による恩恵を受けられます。医師の中には、積極的に投資を行っている人も多いはずです。その一部を、iDeCoに回してみてはいかがでしょうか。 iDeCoについて、「国が用意した年金制度」というキャッチフレーズを聞くと、「まだまだ自分には関係ないこと」「将来の備えが不十分な人を対象にしたもの」と捉える人も多いのではないでしょうか。しかし実際には、iDeCoの利用は現役世代や所得の多い方にとってもメリットを得られるもの。税負担が重い人ほど、所得控除による節税効果を狙ってみてください。 現時点での税金負担を軽減し、将来に向けて備えられるのがiDeCoの強みです。その特徴を正しく把握し、最初の一歩を踏み出してみましょう。■iDeCoの始め方■iDeCoを積極的に 活用したいのはどんな人?■iDeCoの特徴を知り 賢く活用しよう
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